業務用エアコンの配管には、大きく分けて2つの通し方があります。配管が見える「露出配管」と、壁や天井の中に隠す「隠蔽(いんぺい)配管」です。見た目がすっきりする隠蔽配管ですが、実は、入れ替えのときに、思わぬ問題を引き起こすことがあります。
この記事では、業務用エアコンの施工を15年手がけてきた立場から、隠蔽配管の入れ替えで起こりうる問題を、実際にあった現場の例をもとに解説します。そして、なぜ事前の現地調査が、それほど大切なのかをお伝えします。
隠蔽配管とは
隠蔽配管とは、冷媒配管やドレン管、電源線などを、壁や天井の内部に隠して通す施工のことです。配管が表に出ないので、見た目がすっきりし、空間の美観を損ないません。デザインを重視する店舗や、新築の建物などで、よく採用されます。
一方、配管が壁の外に見える状態(化粧カバーなどで覆った状態)を「露出配管」と呼びます。露出配管は、見た目は隠蔽配管に劣りますが、配管が見えて、触れて、交換しやすいという、メンテナンス上の利点があります。
隠蔽配管の弱点は、まさにこの逆です。配管が壁の中に隠れているため、後から状態を確認したり、交換したりするのが難しい。この弱点が、入れ替えのときに、はっきり表れます。
【実例】隠蔽配管で、入れ替えができなかった現場
先日、実際にあった現場の話をします。家庭用のルームエアコンから、業務用のパッケージエアコンへ、更新する工事の予定でした。ところが、現地で機器を見て、これは簡単にはいかないと分かりました。問題が、2つ重なっていたのです。
問題1:配管を引き直せない
まず、配管のサイズです。家庭用のルームエアコンと、業務用のパッケージエアコンでは、使う配管の太さが違います(今回は、2分3分という細い配管から、2分4分という、より太い配管への変更でした)。サイズが変わるので、配管の引き直しが必要です。
ところが、この現場の配管は、外壁をまっすぐ貫通しているのではなく、壁の内部を通って立ち下ろし、外壁の下のほうから出ている、という隠蔽の仕方でした。壁の中を、複雑に通っていたのです。そのため、新しい太い配管を、同じルートで通し直すことが、物理的に無理でした。
問題2:電源を通せない
さらに、電源の問題もありました。家庭用のルームエアコンは、室内機側のコンセントから電源を取ります。一方、業務用のパッケージエアコンは、室外機に電源が必要です。つまり、室外機まで、新しく電源線を持っていかなければなりません。
しかし、これも配管と同じ理由で、壁の中を通して電源線を室外機まで引くことが、無理でした。配管も電源も、隠蔽配管の構造が壁になって、通せなかったのです。
結果として、この現場は、当初の予定通りには工事ができませんでした。隠蔽配管という構造が、入れ替えの大きな障害になった、典型的な例です。
なぜ、こうなってしまったのか——現地調査がなかった
では、なぜ、当日になって「工事ができない」と分かる事態になったのか。理由は、はっきりしています。事前の現地調査が、行われていなかったからです。
この工事は、機器が支給される形で、事前の現地調査がないまま、当日を迎えました。私は、事前に「設置する機器のリストを送ってほしい」とお願いしていました。しかし、当日になっても、それは送られてこなかった。そして、現地で初めて機器を見て、隠蔽配管の構造と機器が合わないことに気づいたのです。
もし、事前にきちんと現地調査をしていれば、「この隠蔽配管では、この機器への入れ替えは難しい」と、前もって分かったはずです。そうすれば、別の工事方法を検討したり、機器の選定を変えたり、お客様に事前に説明したりできた。当日、現場で立ち往生することは、防げたのです。
教訓:発注側が詳しいとは限らない。だから専門業者の現調を
この経験から、施主の方に、ぜひ知っておいてほしいことがあります。
工事を発注する側や、間に入る業者が、必ずしもエアコンに詳しいとは限りません。今回の件でも、そもそも家庭用のルームエアコンと、業務用のパッケージエアコンの違い(配管サイズや電源の違い)を、きちんと理解していないまま、話が進んでいました。だから、隠蔽配管との相性という問題に、誰も事前に気づけなかったのです。
だからこそ、実際に施工する専門業者が、事前に現地を見て、確認することが欠かせません。特に、隠蔽配管の物件では、配管がどう通っているのか、新しい機器に合わせて引き直せるのか、電源は通せるのか——これらは、現場を見なければ判断できません。図面や、口頭の説明だけでは、分からないのです。
隠蔽配管の物件をお使いの方へ
もし、あなたの建物が隠蔽配管で、業務用エアコンの入れ替えを考えているなら、次の点に気をつけてください。
- 「入れ替えるだけ」と簡単に考えない:隠蔽配管は、配管の引き直しや電源の変更が難しいことがある
- 必ず事前に、専門業者の現地調査を受ける:配管の通り方、電源、機器との相性を確認してもらう
- 機種変更(家庭用→業務用など)は特に注意:配管サイズや電源方式が変わり、隠蔽配管では対応できないことがある
- 現地を見ずに「できます」と言う業者には注意:隠蔽配管こそ、現場確認が必須
隠蔽配管は、見た目の美しさという大きな利点があります。ただ、その分、入れ替えのときには、しっかりした事前確認が必要になる、ということを、頭に入れておいてください。
業務用エアコンの業者探しは【簡単・無料・厳選優良業者】のEMEAO!業者が現地調査で何を確認しているかは業務用エアコンの現場調査で何を見ているか、入れ替えで既存配管を流用できるかは業務用エアコンの入れ替えで既設配管は流用できる?、電源(単相・三相)の違いは業務用エアコンの電源(単相・三相)の違いで解説しています。
まとめ
隠蔽配管の業務用エアコンの入れ替えについて、整理します。
- 隠蔽配管は、壁や天井に配管を隠す施工。見た目はすっきりするが、後の交換が難しい
- 入れ替えで配管サイズが変わると、隠蔽配管では引き直せないことがある
- 家庭用→業務用では、電源方式も変わり、電源線を通せないことも
- こうした問題は、事前の現地調査をしなければ、当日まで分からない
- 発注側が詳しいとは限らない。だからこそ、専門業者の現地調査が欠かせない
隠蔽配管の物件は、入れ替えのときに、思わぬ壁にぶつかることがあります。「ただ機械を新しくするだけ」と思っていても、配管や電源の問題で、簡単にはいかないことがある。だからこそ、必ず事前に、実際に施工する専門業者に、現地を見てもらってください。それが、当日のトラブルを防ぐ、確実な方法です。
