業務用エアコンを入れ替えるとき、「配管も全部、新しくするんだろう」と思っている方は多いかもしれません。でも、実際はそうとは限りません。多くの場合、既存の冷媒配管は、そのまま再利用(流用)します。
この記事では、業務用エアコンの施工を15年手がけてきた立場から、入れ替えの際に既存配管を流用できるかどうか、施工者が現場で何を見て判断しているのかを解説します。冷媒が変わる場合の注意点も含めて、実務の視点でお伝えします。
そもそも、なぜ配管を流用するのか
まず、なぜ既存の配管を、わざわざ再利用するのか。理由は、いくつかあります。
ひとつは、費用です。配管を新しく引き直せば、その分の材料費と施工費がかかります。流用できれば、その費用を抑えられます。
もうひとつ、そして実はこちらが大きいのですが、そもそも配管を新しく通し直すのが、簡単ではないことが多いのです。既存の配管は、壁の中や天井裏を通っています。これを引き直すとなると、壁面に新しく穴をあけ直したりする必要が出てきます。そうなると、建物のオーナーの許可が必要になったり、工事が大掛かりになったりします。
だから、ただのエアコンの入れ替えで、配管まで新しくすることは、よほどの理由がない限り、ありません。既存の配管が使える状態なら、流用するのが基本です。
流用できるか、現場で見るポイント
ただし、どんな配管でも流用できるわけではありません。既存の配管が、まだ使える状態かどうか。施工者は、現場で次のような点を確認します。
保温材(断熱材)の状態
まず、配管を覆っている保温材が、剥がれたり傷んだりしていないかを、見える範囲で確認します。保温材が劣化していると、結露などのトラブルにつながるため、状態のチェックは欠かせません。
ガス漏れがないか(特に分岐管の溶接部)
そして、ガス漏れが起きていないか。これは重要です。私の経験上、分岐管があれば、その溶接部から冷媒が漏れていたことが、何度かありました。だから、ガス漏れが疑われる場合は、まずこうした溶接部を疑います。
また、古い冷媒管に亀裂が入っていて、そこから漏れていたこともありました。配管そのものが傷んでいるケースです。こうした漏れがある配管は、当然、そのままでは流用できません。
配管径が、新しい機械と合うか
新しく設置する機械の配管径と、既存配管の径が合っているかも確認します。合わなければ、そのままでは使えません。
冷媒が変わる場合の注意点
入れ替えでは、古い機械と新しい機械で、冷媒の種類が変わることがあります。このとき、配管の流用について、知っておくべき違いがあります。
R410A から R32 への入れ替え
今、主流の冷媒はR410AからR32へと移り変わっています。このR410AからR32への入れ替えの場合、既存の配管は、状態が良ければ、基本的にそのまま流用できます。R410AとR32は、配管にかかる圧力がほぼ同じなので、配管の面では大きな問題が起きにくいのです。
R22 からの入れ替えは、注意が必要
一方、古いR22の機械から、新しい冷媒(R32やR410A)の機械に入れ替える場合は、話が変わります。
メーカーは、R22の機械から新しい冷媒の機械に取り替える場合、原則として既存の冷媒配管は使わず、新しい配管を使うよう案内しています。理由は、冷媒の化学的な特性や、内部に使われる冷凍機油(オイル)が、R22と新しい冷媒とでは異なるためです。古い配管に残ったオイルが、新しい冷媒と相性が悪く、不具合の原因になりうるのです。
そのため、R22世代の古い機械を入れ替える場合は、配管の引き直しや洗浄が必要になることがあります。これも、古い機械が「入れ替えの目安」になる、一つの理由です。
圧縮機の故障が原因の入れ替えも要注意
もう一つ。前の機械が、コンプレッサー(圧縮機)の焼き付きなどの故障で入れ替えになった場合は、配管内に不純物が回っている可能性があるため、既存配管をそのまま再利用しない方がよい、とされています。この場合も、洗浄や引き直しを検討します。
まとめると:基本は流用、ただし状態次第
整理すると、こうなります。
- ただのエアコンの入れ替えなら、既存配管は流用するのが基本(配管を引き直すのは大掛かりで費用もかかるため)
- ただし、保温材の劣化、ガス漏れ(分岐管の溶接部や配管の亀裂)、配管径の不一致があれば、流用できない
- R410A→R32なら、状態が良ければ流用できる
- R22からの入れ替えは、オイルが違うため、原則、配管の引き直しや洗浄が必要(メーカー案内)
- 圧縮機の故障が原因の入れ替えも、配管の再利用は避けたほうがよい
配管を流用できるかどうかは、こうした条件を、施工者が現場で確認して判断します。「入れ替え=配管も全部新品」ではなく、「使える配管は活かし、問題があれば対処する」というのが、実際のところです。だからこそ、現場をきちんと見て、配管の状態を確認したうえで判断してくれる業者を選ぶことが大切です。
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