新しく店舗やオフィスを開く、あるいはエアコンを入れ替えるとき、「業務用エアコンって、どう選べばいいの?」と悩む方は多いと思います。家庭用と違って馬力や形状の種類が多く、しかも高額なので、選び方を間違えると「冷えない」「電気代が高い」といった失敗につながります。
この記事では、業務用エアコンの施工を15年手がけてきた立場から、業種別の馬力の目安と、選定で失敗しないためのポイントを、現場目線で解説します。これから導入・入れ替えを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
業務用エアコン選びの2つの軸:「馬力」と「形状」
業務用エアコン選びは、大きく分けて「馬力(能力)」と「形状(タイプ)」の2つで考えると分かりやすいです。
馬力は、エアコンの冷暖房の能力を表す単位です。部屋の広さや業種に対して適切な馬力を選ばないと、冷えなかったり、逆に効きすぎたりします。
形状は、室内機の設置タイプのことです。天井に埋め込む「天井カセット形」、天井から吊る「天吊形」、壁に掛ける「壁掛形」、床に置く「床置形」などがあり、設置場所や内装に合わせて選びます。最も多く使われているのは、見た目がすっきりする天井カセット形です。
この記事では、特に迷いやすい「馬力の選び方」を業種別に詳しく解説します。
馬力の基本:1馬力でどのくらいの広さ?
まず基本の目安として、1馬力で約11㎡(約3.3坪、約6.6畳)に対応するとされています。たとえば10坪ほどの広さなら、単純計算で3馬力程度が目安になります。
ただし、これはあくまで「基本の目安」です。実際には、同じ広さでも業種によって必要な馬力は大きく変わります。なぜなら、部屋の中で発生する熱の量(熱負荷)が、業種によって全く違うからです。人、照明、厨房機器、日光、PCなど、熱を発生させるものが多いほど、エアコンには大きな馬力が必要になります。
業種別・馬力の目安
業種ごとの馬力の目安を、熱負荷の特徴とあわせて整理します。同じ広さでも、下にいくほど大きな馬力が必要になります。
事務所・オフィス(熱負荷:小〜中)
デスクワークが中心で、熱源は人とPC、照明程度です。比較的空調が効きやすい環境なので、馬力は標準的な目安で選べます。重視すべきは、長時間稼働するための省エネ性能と、風が直接当たらない快適性、静音性です。
店舗・物販店(熱負荷:中)
アパレルや雑貨など一般的な物販店は、お客様の出入りがある分、オフィスよりやや熱負荷が高めです。10坪あたり3馬力程度が目安ですが、来店客が多い店や、冷蔵ショーケースのある生鮮食品店などは、馬力を上げる必要があります。
美容室(熱負荷:中〜大)
ドライヤーや照明など、意外と熱源が多いのが美容室です。一般的な物販店より馬力を高めに見ておくほうが安心です。また、お客様に風が直接当たらない気流の配慮も重要です。
飲食店(熱負荷:大)
最も注意が必要なのが飲食店です。厨房の火や鉄板、お客様の出入りなど、熱源が非常に多く、同じ広さでも他業種よりかなり大きな馬力が必要になります。馬力を大きめに選ぶのが鉄則です。特に、カウンター越しに厨房が近い店や、鉄板焼き・鍋など客席で調理するタイプの店は、ホール側にも強い馬力が求められます。
飲食店は「厨房とホールで空調を分ける」のが基本
飲食店について、もう一歩踏み込んだ重要なポイントです。飲食店では、厨房とホール(客席)で、空調を分けて考えるのが基本です。
理由は、厨房とホールでは環境が全く違うからです。厨房は火や油を使うため、高温多湿で油汚れも多く、ホールはお客様が快適に過ごす空間です。これを一つの空調でまかなおうとすると、どちらも中途半端になります。厨房には熱や油汚れに強い厨房用のエアコンを、ホールには快適性を重視したエアコンを、と分けて選ぶことで、それぞれに適した空調ができます。
もう一つ、厨房について施工者の立場から知っておいてほしいことがあります。厨房は、ダクトや配管が入り組んでいることが多く、思ったような位置に空調機を取り付けられないケースが少なくありません。「ここに付けたい」と思っても、ダクトが邪魔で物理的に設置できない、ということが現場では起こります。
注意したいのは、今エアコンが付いているからといって、同じように付け替えられるとは限らないという点です。機種が変わればサイズや必要なスペースも変わるため、既存と同じ場所・同じ形で設置できない場合があります。だからこそ、飲食店、特に厨房まわりの空調を検討する際は、必ず専門業者に現地を見てもらい、希望する設置が実際に可能かを確認することが大切です。
選定でやりがちな失敗と注意点
馬力選びでは、不足だけでなく「過剰」も失敗になります。施工者の視点から、注意点をお伝えします。
馬力不足:冷えない・電気代が上がる・故障の原因に
馬力が足りないと、いくら運転しても冷えず、エアコンが常にフル稼働になります。これは電気代が上がるだけでなく、機械に負荷がかかり続けて故障の原因にもなります。
馬力過剰:効きすぎ・無駄なコスト
逆に、広さに対して馬力が大きすぎると、効きすぎて「寒すぎる」と感じたり、風が強すぎてお客様に不快感を与えたりします。本体価格も無駄に高くなります。「大きければ安心」ではなく、適切な馬力を選ぶことが大切です。
居抜き物件は特に注意:前の業態のままだと合わない
これは現場で非常によく見るケースです。居抜き物件で、前の入居者が設置したエアコンをそのまま使うと、業態が変われば必要な馬力も変わるため、能力が合っていないことがあります。たとえば、前が事務所だった物件に飲食店が入ると、馬力がまったく足りない、ということが起こります。居抜きで開業する場合は、既存のエアコンが自分の業態に合っているか、必ず確認すべきです。
馬力を上げるなら「配管」にも注意(重要)
もう一つ、施工者として強くお伝えしたい注意点があります。「能力が足りないから、大きい馬力に替えよう」と考えたとき、馬力によっては冷媒配管の太さが変わることがあるという点です。
馬力を上げると、既存の配管がそのまま使えず、配管の交換が必要になる場合があります。そうなると、工事の内容も費用も変わってきます。「機械だけ大きいものに替えればいい」と自己判断で機種を購入してしまうと、いざ設置の段になって「配管が合わない」となりかねません。馬力を変える際は、必ず業者に現地を見てもらい、既存の配管が使えるかを確認した上で機種を決めてください。
さらに踏み込んでお伝えすると、馬力を上げて冷媒配管の交換が必要になった場合、そもそも配管を新しく引き直せるとは限りません。配管を通すには天井裏を通す必要がありますが、天井裏の状況によっては新しい配管を通すスペースや経路が確保できないことがあります。また、建物が賃貸の場合、配管工事に建物オーナーの許可が必要になることもあり、状況によっては引き直し自体ができないケースもあるのです。
つまり、「大きい馬力に替えたい」と思っても、配管の引き直しが必要かどうか、そしてそれが実際に可能かどうかは、現場を見てみないと分かりません。だからこそ、機種を決める前に、まず専門業者に「この馬力にするには配管の引き直しが必要か」「それは実際に可能か」を確認してもらうことが、何より重要です。ここを確認せずに機械だけ先に購入してしまうと、いざ設置できない、という最悪の事態になりかねません。
そのほか、選定時に考えておきたいこと
電源の種類(単相・三相)
業務用エアコンは、家庭用と電源が異なります。単相200Vと三相200Vがあり、機種や馬力によって必要な電源が変わります。既存の電源で足りない場合は電気工事が必要になるので、これも事前確認が必要です。
補助金・助成金が使える場合も
省エネ性能の高い業務用エアコンの導入には、国や自治体の補助金・助成金が使える場合があります。経済産業省の省エネ補助金のほか、都道府県や自治体が独自に行っている制度もあります。導入を検討する際は、お住まいの地域の制度を調べてみると、費用を抑えられる可能性があります。
リースという選択肢
購入のほかに、リース契約で導入する方法もあります。初期費用を抑えられ、リース料を経費処理できるメリットがあります。資金計画に合わせて検討するとよいでしょう。
結局、最後は「専門業者に現地を見てもらう」のが確実
ここまで業種別の目安をお伝えしてきましたが、最後に正直なことをお伝えします。馬力の本当に正確な選定には、「空調負荷(熱負荷)計算」という専門的な計算が必要です。これは、部屋の広さだけでなく、業種、発熱機器、建物の構造、窓の大きさや向き、断熱性能などを総合的に考慮するもので、専門業者でないと正確には出せません。
この記事の目安はあくまで「あたりをつける」ためのものです。実際に導入・入れ替えをする際は、必ず専門業者に現地を見てもらい、あなたの店舗・オフィスに最適な馬力と機種を提案してもらってください。それが、導入後の「冷えない」「電気代が高い」といった失敗を防ぐ、一番確実な方法です。
これから業務用エアコンを導入・入れ替えする方は、まず専門業者に現地を見てもらい、あなたの店舗・オフィスに最適な馬力と機種を提案してもらうのが確実です。無料で見積もり・相談ができます。
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よくある質問(FAQ)
Q. 広さから馬力を自分で計算できますか?
A. 「1馬力=約11㎡」を目安に、おおよそのあたりはつけられます。ただし業種や発熱機器によって必要な馬力は変わるため、正確な選定は専門業者の負荷計算が必要です。自分での計算は「目安を知る」程度に留めるのが安全です。
Q. 居抜き物件のエアコンをそのまま使っても大丈夫ですか?
A. 前の業態と自分の業態が同じなら使える可能性がありますが、業態が変わる場合は馬力が合わないことが多いです。特に事務所→飲食店のように熱負荷が大きく変わる場合は要注意。一度、専門業者に見てもらうことをおすすめします。
Q. 馬力は大きめにしておけば安心ですか?
A. 大きすぎると「効きすぎ」「風が強すぎる」「本体価格が無駄に高い」といったデメリットがあります。適切な馬力を選ぶことが、快適性とコストの両面で大切です。
業種ごとの選び方は業種別・業務用エアコンの選び方、1台の室外機で複数台動かすビルマルについてはビルマルとパッケージエアコンの違いと選び方、電源の種類は業務用エアコンの電源(単相・三相)の違いで解説しています。
まとめ
業務用エアコンの選び方の要点を整理します。
- 選びの軸は「馬力(能力)」と「形状(タイプ)」
- 1馬力≒約11㎡が基本の目安。ただし業種で必要馬力は変わる
- 熱負荷の大きい飲食店は、馬力を大きめに。厨房とホールは空調を分ける
- 馬力不足も過剰も失敗のもと。適切な馬力を選ぶ
- 居抜き物件は、前の業態のままだと合わないことがある
- 馬力を変えると配管の太さが変わることも。自己判断で買わない
- 正確な選定には専門業者の負荷計算が必要
業務用エアコンは高額で、長く使う設備です。目安を参考にあたりをつけたら、最後は必ず専門業者に現地を見てもらい、あなたの環境に最適な機種を選んでください。それが、快適で経済的な空調への一番の近道です。
「うちの店舗にはどの馬力・機種が合うのか」を正確に知りたい方は、まず専門業者に現地を見てもらうところから始めてみてください。
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