業務用エアコンの設置工事の流れと時間|施工者が当日の作業を解説

業務用エアコンの導入や入れ替えを決めたものの、「工事ってどんな流れで進むの?」「当日はどのくらい時間がかかる?」「営業は休まないとダメ?」——こうした疑問を持つ方は多いと思います。業務用エアコンの工事は、家庭用と違って大がかりで時間もかかるため、事前に流れを知っておくと安心です。

この記事では、業務用エアコンの施工を15年手がけてきた立場から、設置工事の当日の流れと所要時間、そして工事をスムーズに進めるためのポイントを、現場目線で解説します。

業務用エアコンの工事は、家庭用とどう違う?

まず前提として、業務用エアコンの工事は家庭用とは規模が大きく異なります。家庭用の壁掛けエアコンが1台あたり1〜2時間で終わるのに対し、業務用は1台あたり数時間〜8時間ほどかかるのが一般的です。

理由は、業務用は機器が大きく重い(重いものでは200kg近い)こと、天井裏への設置や配管・電源工事が複雑なこと、冷媒ガスの回収など専門的な作業が必要なことなどです。だからこそ、しっかりした施工技術が求められ、工事にも時間がかかります。

設置工事の流れ【入れ替え工事の場合】

ここでは、古い機器から新しい機器に入れ替える工事を例に、当日の流れを順番に説明します。新規設置の場合は、このうち撤去の工程がなくなります。

ステップ1:安全確認・打ち合わせ

作業開始前に、搬入経路、配管経路、取り付け位置、電源などを作業員で確認します。事前の現地調査の内容と現場を照らし合わせ、安全に作業を進める計画を確認する工程です。

ステップ2:養生

建物やお客様の備品を傷つけたり汚したりしないよう、作業エリアや搬入経路に養生(保護)を行います。地味な工程ですが、丁寧な業者ほどここをしっかりやります。

ステップ3:冷媒ガスの回収(ポンプダウン)

既存機器の冷媒ガスを回収します。冷媒ガスは大気中に放出すると環境破壊につながるため、法律で適切な回収が義務付けられています。この作業には「冷媒フロン類取扱技術者」などの資格が必要です。資格を持った業者が、ルールに従って回収します。

ステップ4:既存機器の撤去

古い室内機・室外機を撤去します。撤去した機器も、法令に従って適切に処分します。高所や狭い場所では、レッカー車などの重機を使うこともあります。

ステップ5:新しい機器の設置

新しい室内機・室外機を、打ち合わせで決めた位置に取り付けます。室内機を天井に固定し、室外機を設置し、転倒防止や防振ゴムの設置も行います。重い機器の搬入には、状況によってレッカー車が必要です。

ステップ6:配管・配線工事

室内機と室外機を、冷媒配管・ドレン配管・電源配線でつなぎます。入れ替えの場合、既存の配管で使えるものは流用しますが、状態によっては新しく引き直します。

ステップ7:真空引き(真空乾燥)

真空ポンプを使って、冷媒配管の内部を真空にする作業です。これは配管内の空気や水分を取り除くための、非常に重要な工程です。この作業を省くと、配管内に水分や空気が残り、後々の故障やガス漏れ、能力低下の原因になります。

この真空引きについて、施工者として補足させてください。そもそも冷媒配管の中は、冷媒だけが通るように設計されていて、空気が入っていてよい構造にはなっていません。だからこそ、配管をつないだ後に、中の空気や水分をしっかり抜く必要があるのです。

もし真空引きが不十分で配管内に水分が残っていると、エアコン内部には冷媒を圧縮するための「膨張弁」という管がごく細くなった箇所があり、そこで水分が凍結して詰まり、冷媒の通り道をふさいでしまうことがあります。こうなると、冷えない・効かないといった不調や、最悪の場合は心臓部であるコンプレッサー(圧縮機)の故障につながります。メーカーも、真空引きが不適切な場合は保証の対象外としていることが多く、それだけ重要な工程だということです。

怖いのは、真空引きを省いても、設置直後は普通に動いてしまうことです。だから施主は手抜きに気づけません。しかし水分や空気が残った状態で使い続けると、数年後にトラブルとして表面化します。工事費が極端に安かったり、作業時間が異常に短かったりする業者には、この真空引きをきちんとやっているか、注意が必要です。

ステップ8:試運転・検査

新しい機器にガスを循環させ、試運転を行います。正常に動作するか、室外機の電圧・電流・ガス圧、冷暖房の温度などをチェックします。ここで問題がないことを確認して、はじめて工事完了となります。

ステップ9:片付け・引き渡し

作業スペースを清掃し、養生を撤去します。使い方の説明を受け、施工完了の確認をして引き渡しとなります。

工事にかかる時間の目安

所要時間は、機種のタイプや新規か入れ替えか、台数、現場の難易度によって変わります。タイプ別の目安は次の通りです。

  • 壁掛形:2〜3時間
  • 床置形:3〜4時間
  • 天井吊形:3〜4時間
  • 天井カセット形:4〜5時間
  • ビルトイン形:6〜8時間

たとえば、よく使われる天井カセット形4方向の4馬力を入れ替える場合、一式で6〜8時間が目安です。ただし、配管の延長や電源工事、レッカーが必要な場合などは、これより長くなります。台数が増えれば、その分時間も加算されます。

施工者の経験から、工事が予定より長引きやすいケースをお伝えします。特に時間がかかりやすいのが、天井の補修が発生するときです。古い機種を外して新しい機種を付ける際、パネルの寸法が合わず天井に隙間や穴が見えてしまうと、その補修が必要になります。こうなると、空調業者だけでなく内装業者も作業に入ることになり、複数の業者が絡む分、工事全体が長引きやすくなります。

ここで大切なのが、そもそも天井の補修が必要になるかどうかは、事前に現地調査をしてもらわないと分からないという点です。だからこそ、現地調査は必ず受けてください。事前に補修の要否が分かっていれば、当日になって慌てたり、想定外の追加費用が発生したりする事態を防げます。

工事をスムーズに進めるための準備

工事当日をスムーズに進めるために、施主側で準備しておくとよいことをお伝えします。

搬入経路・作業スペースを空けておく

大きな機器を搬入し、作業するスペースが必要です。室内機・室外機の周りや搬入経路に物があれば、事前にどけておくと作業が早く進みます。

営業時間との調整をしておく

工事中はエアコンが使えず、作業音もします。店舗や事務所の場合、営業に影響しない日程・時間帯を業者と相談しておきましょう。定休日や営業時間外、夜間・早朝の工事に対応してくれる業者もあります。

事前の現地調査を必ず受ける

これが最も重要です。現地調査をきちんと受けておくと、当日の不測の事態(配管が合わない、搬入できない等)を防げます。逆に、現地調査なしで工事当日を迎えると、「想定外の作業が必要で時間も費用も追加」という事態になりかねません。

繁忙期(夏)は日程に余裕を

工事の依頼時期にも注意が必要です。夏場(7〜8月)の繁忙期は、エアコン需要が集中するため、依頼から工事までに3週間〜1ヶ月かかることもあります。さらに、繁忙期は機器や部材の入手が難しくなることもあり、納期が延びがちです。

つまり、夏に壊れてから慌てて依頼すると、「すぐに工事してもらえず、暑い中で待つ」ことになりかねません。導入・入れ替えを考えているなら、需要が落ち着くシーズンオフ(秋〜春)に、余裕を持って依頼するのがおすすめです。これは費用面でも有利になりやすいです。

施工者の立場から、夏の繁忙期の実情をもう少しお伝えします。そもそも冬場は水漏れなどのトラブルが起きにくいのですが、夏は冷房をフル稼働させるため、水漏れやガス漏れの対応依頼が一気に増えます。新規の設置工事だけでなく、こうした緊急のトラブル対応も重なるため、業者は手一杯になり、「電話一本ですぐ伺います」とはなかなかいかないのが正直なところです。

加えて、機器そのものも需要に合わせて価格が上がりやすい時期です。つまり夏は、予約が取りにくく、費用も高くなりやすいという、施主にとって不利が重なる季節なのです。だからこそ、入れ替えを考えているなら、トラブルが少なく業者にも余裕があるシーズンオフに動くのが、あらゆる面で得策です。

よくある質問(FAQ)

Q. 工事は1日で終わりますか?

A. 標準的な入れ替えであれば1日で終わることが多いです。ただし、台数が多い場合、配管の引き直しや電源工事が必要な場合、レッカーを使う場合などは、それ以上かかることもあります。正確な所要時間は、現地調査の上で業者に確認してください。

Q. 営業しながら工事できますか?

A. 工事中はそのエアコンが使えず、作業音や搬入作業もあるため、店舗では営業に影響します。定休日や営業時間外での工事が可能か、業者に相談するのがおすすめです。

Q. 工事業者を選ぶとき、何を確認すべき?

A. 冷媒の取り扱い資格を持っているか、現地調査をきちんと行うか、見積もりの内訳が明確か、などを確認しましょう。特に真空引きなどの基本工程を省かない、丁寧な施工をする業者を選ぶことが、後々のトラブルを防ぎます。

業者選びのポイントについては、業務用エアコンの見積書の見方|業者選びで、見積書のチェック方法や優良業者の見分け方を詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

工事中の重要工程については真空引きとフレア加工、機械の搬入は業務用エアコンの搬入、最後の試運転は試運転と引き渡しで詳しく解説しています。

まとめ

業務用エアコンの設置工事について、要点を整理します。

  • 業務用は家庭用より大がかりで、1台あたり数時間〜8時間が目安
  • 流れは、養生→ガス回収→撤去→設置→配管→真空引き→試運転
  • 真空引きなどの基本工程を省かない、丁寧な施工が重要
  • 搬入経路を空け、営業時間と調整し、現地調査を必ず受ける
  • 繁忙期(夏)は日程が延びやすいので、シーズンオフに余裕を持って

工事の流れを知っておけば、当日も安心して任せられます。そして何より大切なのは、現地調査を丁寧に行い、基本工程を省かない信頼できる業者を選ぶことです。まずは専門業者に相談し、現地を見てもらうところから始めてみてください。

業務用エアコンの導入・入れ替えを検討している方は、まず専門業者に現地を見てもらい、工事の内容や費用、日程を確認するところから始めるのが確実です。現地調査と見積もりは無料で対応している業者がほとんどです。

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