業務用エアコンは高額で、一度設置すると長く使う設備です。だからこそ、導入や工事での失敗は、時間もお金も大きく損なうことになります。「安さで選んだら手抜き工事だった」「自己判断で機械を買ったら設置できなかった」——こうした失敗は、実は事前に知っておけば防げるものがほとんどです。
この記事では、業務用エアコンの施工を15年手がけてきた立場から、現場で実際によく見る失敗・トラブルを、「施主側がやりがちな失敗」と「業者側の手抜き工事」の両面から解説します。これから導入・入れ替えを考えている方は、同じ失敗をしないための参考にしてください。
【施主側】発注する側がやりがちな失敗
まずは、発注する施主側でよく見る失敗です。知らなかったために損をしてしまうケースが多いので、事前に押さえておきましょう。
失敗1:総額の安さだけで業者を選んでしまう
最も多い失敗です。複数の見積もりを比べて、一番安い総額の業者に飛びついた結果、後から追加費用を次々に請求され、最終的に他社より高くついた——というケースです。安い見積もりには、本来必要な工事が含まれていないことがあります。総額だけでなく、内訳が明確か、現地調査をきちんとするかで判断することが大切です。
失敗2:現地調査を省いてしまう
「早く済ませたい」と現地調査を省くと、当日になって「配管が合わない」「搬入できない」「追加工事が必要」といった想定外の事態が起きがちです。業務用エアコンの工事は現場の条件で大きく変わるので、現地調査は必ず受けるべきです。
失敗3:自己判断で機械を買ってしまう
「能力が足りないから大きい馬力に」と、自分で判断して機械を購入してしまうケース。しかし馬力によっては冷媒配管の太さが変わり、既存の配管が使えないことがあります。さらに、天井裏の状況や建物オーナーの都合で、配管を引き直せないこともあります。機種は、必ず業者に現地を見てもらってから決めるべきです。
補足すると、きちんと現地調査をしてから工事をすれば、居抜きでの能力不足によるクレームは、実際にはあまり起こりません。問題になるのは、調査を省いた場合です。また、能力を上げる際には、冷媒配管だけでなく、ブレーカーの容量を大きくしたり、電源線を太くしたりする必要が出てくることもあります。こうした電気側の対応が必要かどうかも、現地調査をすれば事前に分かります。やはり、現場を見てもらうことがすべての基本です。
失敗4:居抜き物件のエアコンをそのまま使う
居抜き物件で、前のテナントが残したエアコンをそのまま使ったら、業態が変わって能力が足りなかった、というケース。特に事務所だった場所に飲食店が入ると、熱負荷が大きく変わり、まったく冷えないことがあります。居抜きの場合は、既存のエアコンが自分の業態に合っているか確認が必要です。
失敗5:電源の種類(単相・三相)を間違えて注文する
意外と多いのが、電源の種類を間違えて機械を注文してしまう失敗です。業務用エアコンには、100Vと200V、そして「単相」と「三相(動力)」という電源の種類があり、機種や設置環境によって必要なものが決まっています。3馬力程度までの一般的なパッケージエアコンは、単相と三相の両方がラインナップされていることが多く、ここで間違いが起こりやすいのです。
実際に、本来は単相を選ぶべきところで、三相(動力)の機械を注文してしまった方がいました。電源が合わなければ、当然そのままでは使えません。単相と三相の取り違え、100Vと200Vの間違いは、施主が自分で機種を選ぶときにやりがちなミスです。これも、業者に現地の電源環境を確認してもらってから機種を決めれば、防げる失敗です。
【業者側】こんな手抜き工事に注意
次に、施工する業者側の手抜き工事です。これらは施主には見えにくく、設置直後は問題なく動くため、気づきにくいのが厄介です。数ヶ月後、数年後にトラブルとして表面化します。こういう工事をしない業者を選ぶことが、何より大切です。
手抜き1:真空引きを省く・不十分
配管内の空気や水分を抜く「真空引き」を省いたり、時間を短縮したりする手抜きです。省いても設置直後は動きますが、配管内に残った水分が凍って詰まり、数ヶ月〜数年後に冷えなくなったり、コンプレッサーが故障したりします。工事費が極端に安い、作業時間が異常に短い業者は要注意です。
手抜き2:フレア加工の傷を見逃す
配管をつなぐフレア部分に傷があると、そこからゆっくりガスが漏れ、数年後にガス不足で冷えなくなります。施工時にフレアの状態をしっかり確認せず、そのまま取り付けてしまう手抜きです。
手抜き3:配管・ドレンの保温不足による結露・水漏れ
天井裏の冷媒管やドレン管の保温が不十分だと、結露して天井裏で水漏れを起こします。見えない部分なので、天井にシミが出て初めて気づくことも多いです。
手抜き4:ドレンの逆勾配による水漏れ
排水を流すドレン管は、適切な勾配をつけて設置する必要があります。これがいい加減で逆勾配になっていると、水が流れず逆流して、室内機から水が漏れてきます。
手抜き5:配管まわりの仕上げが雑
もう一つ、施工の丁寧さが表れるのが、配管まわりの仕上げです。たとえば、フレア部分の保温をし忘れているケースを見たことがあります。また、室外の冷媒配管を、スリムダクトやラッキングといった化粧材できれいに仕上げてくれる業者もいれば、「つながってさえいればいい」という感覚で、冷媒管や電源線をむき出しのまま雑に施工する業者もいます。
配管の仕上げは、見た目の問題だけではありません。保温や化粧がきちんとされていないと、劣化が早まったり、結露やトラブルの原因になったりすることもあります。仕上がりの丁寧さは、その業者の仕事に対する姿勢が表れる部分でもあるので、可能であれば施工事例の写真などで、過去の仕上がりを確認しておくとよいでしょう。
特に大変だった補修事例
手抜き工事の中でも、特に補修が大変だったケースをお伝えします。壁の中にドレン管が埋め込まれている現場で、その壁内のドレン管がしっかり接続されておらず、水漏れを起こしていました。配管が壁に埋まっているため、補修には一度壁を壊さなければならず、大がかりな工事になりました。最初の施工さえきちんとしていれば、まったく不要だった工事です。手抜き工事のツケは、最終的に施主が、余計な時間と費用という形で支払うことになります。
施工者として正直にお伝えすると、天井裏に入って作業する際には、細心の注意が必要です。私自身、天井裏での作業中に、足を乗せた場所が弱く、天井を踏み抜いて穴を開けてしまった経験があります。そのときは、すぐに業者や材料を手配し、後日きちんと補修対応をしました。
お伝えしたいのは、業務用エアコンの工事は、天井裏や高所での作業を伴う、技術と慎重さが求められる仕事だということです。だからこそ、経験が浅い業者や、作業を急ぐ業者では、こうした不測の事態が起こりやすくなります。万が一のときにきちんと対応してくれるかという意味でも、工事保証の有無を確認しておくことが大切です。
入れ替え工事で見落としがちなこと
パネル寸法の違いで天井補修が必要に
古い機種から新しい機種に入れ替えるとき、パネルの寸法が違うと、天井に開いていた穴が隠れずに見えてしまい、天井の補修工事が別途必要になることがあります。事前に現地調査で確認していれば防げますが、当日いきなり言われると驚く費用です。
部品供給が終わって本体ごと交換に
古い機種は、一部の部品(ドレンポンプなど)が壊れただけでも、メーカーの部品供給が終わっていて、本体ごと交換するしかなくなることがあります。10年以上使っている機種では、これが起こりやすくなります。
失敗しないための5つのポイント
ここまでの失敗事例を踏まえて、失敗を防ぐためのポイントをまとめます。
- 総額の安さだけで選ばない:内訳の明確さ、現地調査の有無で判断する
- 現地調査を必ず受ける:当日のトラブルと追加費用のほとんどは、これで防げる
- 自己判断で機械を買わない:機種は業者に現地を見てもらってから決める
- 基本工程を省かない業者を選ぶ:真空引きなどを丁寧にやる業者かを確認
- 工事保証を確認する:万が一のトラブルに備えて、保証の有無と内容を確認
これらはどれも、事前に知っていれば実践できることばかりです。
これらの失敗を防ぐ一番の方法は、信頼できる業者に現地をしっかり見てもらうことです。まずは複数の業者に無料の現地調査・見積もりを依頼して、対応や見積もりの内訳を比較するところから始めるのがおすすめです。
最大8社から一括お見積り【業務用エアコン】それぞれのテーマは、個別の記事でさらに詳しく解説しています。業者選びと見積書の見方は業務用エアコンの見積書の見方|業者選び、馬力や機種の選び方は業務用エアコンの選び方|業種別の馬力の目安、工事の流れは業務用エアコンの設置工事の流れと時間で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
まとめ
業務用エアコンの工事でよくある失敗を、施主側と業者側の両面から見てきました。
- 施主側:安さだけで選ぶ、現地調査を省く、自己判断で買う、居抜きのまま使う
- 業者側:真空引きの省略、フレアの傷、保温不足、ドレンの逆勾配
- 入れ替え時:パネル寸法、部品供給終了に注意
これらの失敗は、「信頼できる業者に、現地をしっかり見てもらう」ことで、そのほとんどを防げます。高額な設備だからこそ、目先の安さや手軽さに流されず、丁寧に進めることが、結果的に一番の得になります。まずは複数の業者に現地調査を依頼し、比較するところから始めてみてください。
「同じ失敗をしたくない」「信頼できる業者に頼みたい」という方は、まず専門業者の現地調査・見積もりから始めてみてください。
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