業種別・業務用エアコンの選び方|飲食店・美容室・工場など施工者が解説

業務用エアコンは、同じ広さの空間でも、業種によって最適な選び方が大きく変わります。飲食店とオフィスでは求められるものが違いますし、美容室と工場でもまったく異なります。「広さだけで機種を選んだら、いざ使ってみると合わなかった」ということも起こり得ます。

この記事では、業務用エアコンの施工を15年手がけ、さまざまな業種の現場に入ってきた立場から、業種別の選び方を解説します。それぞれの業種の空調の課題と、選び方のポイント、そして施工者だからこそ気をつけている現場の工夫まで、実務目線でお伝えします。これから導入・入れ替えを考えている方は、自分の業種の部分を参考にしてください。

飲食店

飲食店は、業務用エアコンにとって最も過酷な環境の一つです。理由は、いくつもあります。

まず、熱源が多いこと。厨房の火や調理の熱、お客様の出入りによる熱の流入で、空調の効きが悪くなりがちです。そのため、他の業種より馬力を大きめに選ぶのがポイントです。特に、鉄板焼き・焼肉・鍋料理など、客席で調理するタイプの店は、ホール側にも強い馬力が必要です。また、厨房とホールは温度差が生じやすいので、空調系統を分けることも検討します。

そして、飲食店で最も悩ましいのが油汚れです。油や煙、蒸気が多く発生するので、エアコンの表面はもちろん、内部にも汚れが付きやすくなります。フィルターやパネルが油でベタベタになり、詰まると風量が落ちて効きが悪くなります。だから、飲食店では掃除のしやすさも重要な選定ポイントになります。

飲食店の現場でいつも実感するのが、油汚れの手強さです。特に揚げ物や炒め物の多い店では、フィルターやパネルが油でベタベタになります。油はホコリと混じって粘つくので、掃除を怠るとあっという間に詰まり、風量が落ちて効きが悪くなります。以前、あるラーメン屋さんで空調の不調を見にいったときは、室外機から大きな異音がしていて、調べるとガス漏れが原因でした。飲食店は熱も湿気も油も多く、エアコンにとって本当に過酷な環境なので、馬力に余裕を持たせることと、こまめな掃除・点検が、他の業種以上に大切になります。

美容室

美容室は、飲食店とはまったく違う配慮が必要な業種です。

まず、お客様が長時間座って施術を受けるため、風が直接当たると不快に感じられます。カットやカラーの最中に冷風が当たり続けるのは、お客様にとって苦痛です。だから、風がお客様に直接当たらない配置・風向きへの配慮が欠かせません。

また、美容室はおしゃれな内装で世界観を演出しているお店が多く、エアコンが空間の美観を損なわないことも大切です。デザイン性への配慮が求められます。さらに、パーマ液やスプレー、パウダーなどが舞うため、フィルターが目詰まりしやすい点も、掃除のしやすさという観点で考慮します。

美容室は、改装工事に合わせて新しく設置するケースが多いです。その場合、図面をもとに、お客様が座る位置を確認しながら、風が直接当たらない場所を選んで設置を計画します。また、美容室は内装にこだわったお店が多く、天井や壁がむき出しの「スケルトン」の状態の現場も少なくありません。そうした現場では、配管がそのまま見えてしまうので、配管をできるだけきれいに、すっきりと見せるように気を配っています。お店の世界観を壊さないよう、見た目にも配慮するのが、美容室の施工では大切です。

風が人に当たらない設置位置の考え方は、業務用エアコン 室内機の取り付け位置の選び方で詳しく解説しています。

学校・教育施設

学校や教育施設も、業務用エアコンがよく設置される場所です。

教室のような空間では、天井の構造などから、天吊形(天井から吊り下げるタイプ)が選ばれることが多いです。また、勉強に集中できるよう、風でプリントやノートがめくれない配慮や、冷えすぎ・暖めすぎを避ける温度管理も意識されます。

そして、学校ならではの、施工者として特に神経を使う点があります。それは安全管理です。作業で使う工具などを、うっかり現場に置き忘れて、生徒・学生が触ってしまう、といったことが絶対にないよう、細心の注意を払います。

学校では、教室に天吊形を設置することがよくあります。そして、学校の現場で何より神経を使うのが、安全管理です。作業に使った工具を、うっかり現場に置き忘れて、生徒や学生が触ってしまうようなことが絶対にないよう、道具の管理には細心の注意を払います。子どもたちが日常的に過ごす場所だからこそ、施工中も施工後も、安全には人一倍気をつけています。

工場・倉庫

工場や倉庫は、また特有の課題があります。

まず、天井が高いことが多く、空間が大きいため、エアコンの効きが届きにくくなります。空間全体を空調するのか、作業する場所だけを狙って空調するのかで、選ぶ機種や設置方法が変わります。大空間には出力の高い機種が必要です。

そして、工場でよく問題になるのが粉塵です。粉塵の多い環境では、フィルターがすぐに汚れてしまうため、メンテナンス性が特に重要になります。

工場は、天井が高い大空間の現場が多く、そのぶん空調が効きにくいのが特徴です。加えて、粉塵の多い環境も多く、フィルターがすぐ汚れてしまいます。そこで、フィルター清掃がしやすいように、パネルが電動で降りてくる昇降式のタイプを選ぶこともあります。高い場所のフィルターも、昇降式なら脚立や高所作業なしで手入れできるので、メンテナンス性が大きく向上します。また、工場では火気が使えない現場もあり、そうした場合は、火を使わずに配管を接続できる工具(ズームロックなどの火無し継手)で対応することもあります。

オフィス

オフィスは、従業員が一日中過ごす空間なので、快適性と集中できる環境が求められます。

ポイントは、席の配置と風向きです。特定のデスクに風が直撃すると、その席の人だけ寒い、ということになります。部屋全体に均一に風を行き渡らせる配置が理想です。また、静かに集中できるよう、静音性も選定の要素になります。

オフィスの施工で気をつけているのが、デスクなど什器の扱いです。オフィスでは、デスクのすぐ上に空調機が設置されていることもあり、施工中に、工具や部材をデスクの上に落としたり、作業に伴う水などを垂らしたりしないよう、細心の注意を払います。お客様の大切な書類やパソコンがある場所なので、汚したり傷つけたりしないよう、養生をしっかりして作業します。

業種を問わず気をつけていること:結露対策

最後に、業種を問わず、施工者として気をつけている大切なことをお伝えします。それは結露対策です。

天井裏が高温多湿になりやすい環境(屋上の真下や、折半屋根の建物など)では、冷えた室内機や冷媒配管に結露が発生し、天井にシミができたり、水漏れを起こしたりすることがあります。これを防ぐため、私は、天井裏が結露しそうな環境だと判断した場合には、「高湿度対応キット」を選定するようにしています。

高湿度対応キットは、各メーカーが用意しているオプション部材で、天井内の温度・湿度が高くなる環境(目安として、天井裏が高温多湿になる場所)で、室内機や配管の結露を抑えてくれます。こうした対策が必要かどうかは、現地調査で天井裏の状況を見て判断します。見えない部分だからこそ、事前の見極めが大切です。この判断ができるかどうかも、経験のある業者かどうかの一つの分かれ目です。

これはどの業種にも共通することですが、私は、天井裏の状況を見て、結露しそうな環境だと判断した場合には、高湿度対応キットを選定するようにしています。天井裏が高温多湿になりやすい現場では、対策をしておかないと、結露で天井にシミができたり、水漏れにつながったりするからです。見えない天井裏のことなので、現地調査の段階で「ここは結露しやすそうだ」と見極めて、先に手を打っておくことが大切だと考えています。

結局は「現地調査」がすべての基本

業種別のポイントをお伝えしてきましたが、最も大切なのは、その業種の特性を理解した業者に、現地を見てもらうことです。同じ「飲食店」でも、店の広さ、厨房の位置、熱源、天井の状況はすべて違います。業種の一般論だけでなく、その現場の実際の条件を見て、最適な機種・馬力・設置方法・オプションを判断することが、失敗しない導入につながります。

自分の業種に合ったエアコンを選ぶには、その業種の特性を理解した業者に、現地をしっかり見てもらうのが一番です。まずは複数の業者に無料の現地調査・見積もりを依頼して、提案内容や対応を比較してみるのがおすすめです。業種ならではの課題に、きちんと向き合ってくれる業者を選びましょう。

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業種ごとのポイントに加えて、業務用エアコン選びの基本もあわせて押さえておくと安心です。馬力や機種の選び方は業務用エアコンの選び方|業種別の馬力の目安、室内機の形状の違いは業務用エアコンの種類(形状)の違い、飲食店などで重要なクリーニングは業務用エアコンのクリーニング頻度と方法で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

まとめ

業種別の業務用エアコンの選び方について、要点を整理します。

  • 飲食店:熱源が多く馬力大きめ、厨房とホールを分ける、油汚れ対策・掃除のしやすさ
  • 美容室:風の直撃を避ける、デザイン性、配管をきれいに見せる
  • 学校:天吊形が多い、風でプリントがめくれない配慮、安全管理
  • 工場・倉庫:天井が高い大空間、粉塵対策、メンテナンス性(昇降式パネルなど)
  • オフィス:席の配置と風向き、静音性
  • 共通:結露しそうな環境では高湿度対応キットなどの対策を

業務用エアコンは、業種によって最適な選び方が大きく異なります。自分の業種の特性を理解し、その特性を分かっている業者に相談することが、快適で効率のよい空調への一番の近道です。広さや価格だけでなく、業種ならではのポイントも踏まえて、じっくり選んでください。

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